第34回生命医科学セミナー Thomas A. Kunkel博士[開催報告]
第34回生命医科学セミナー Thomas A. Kunkel博士[開催報告]
この度、日本学術振興会の外国人研究者招へい(短期)のプログラムに採択されて、11月15日(金)〜30日(月)の日程で来日されたThomas A. Kunkel博士(Genome Integrity and Structural Biology Laboratory, National Institute of Environmental Health Sciences, NIH, DHHS, USA)に、10月25日(水)の17:30~19:00の時間帯で、総合研究棟1階102講義室にて「Studies of Leading and Lagging Strand DNA Replication Fidelity in Yeast」と題しての講演をしていただきました。
Kunkel博士は長年にわたり、生命科学領域で最も重要なプロセスの内の1つであるDNA複製の忠実度に対する私達の理解を進める上で極めて大きな貢献をしてきておられます。Kunkel博士が真核生物においてリーディング鎖とラギング鎖を複製しているそれぞれのDNAポリメラーゼを同定したことは良く知られています (Science 2007, Molecular Cell 2008, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2010)。これらの知見を基に、Kunkel博士はDNA複製固有の非対称性、DNA複製の正確性およびミスマッチ修復系との間に存在する根源的な関係を明らかにすべく研究を展開しています。セミナーでは、DNA複製に関わるDNAポリメラーゼについての体系的なレビュー、DNA複製過程における忠実度に関する最新の研究成果を含めてとても充実した内容のお話をしていただきました。これらインパクトのあるお話を拝聴し、予定時間一杯を使って活発な質疑応答がなされました。
Kunkel博士は複製中に大量のリボヌクレオチドがDNAに取り込まれることを発見し、RNaseH2がそれらの除去を行うことを示し、さらに、この除去系がうまく働かなければ、全く新しいメカニズムによって突然変異を起こし得ることを発表してきています (Nature Chemical Biology 2010, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2011)。この内容は、最新の研究成果と共に、11月27日(金)に開催の日本環境変異原学会第44回大会(大会会長 續 輝久)で特別講演「Ribonucleotides in DNA: Origins, Repair and Consequences」と題してお話しいただき、多くの参加者に大変好評でした。
Kunkel博士と司会の中津准教授 |
質疑応答 |
セミナー中のKunkel博士 |
ほぼ満員の聴衆 |