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2017.2.8 大阪大学 麓勝己先生セミナー

 2017.1.20 

「上皮頂端収縮調節による肺胞形成機構」
日時:2017年2月8日(水)14:00-15:00
場所:九州大学病院キャンパス 基礎研究A棟2階セミナー室
演者:大阪大学大学院医学系研究科分子病態生化学 助教 麓 勝己先生

肺、膵臓、唾液腺などの管腔臓器は、ガス交換や分泌物の産生など臓器固有の機能を有する「腺房」とその通り道である「導管部」により構成される。肺では導管部である気道が発生前期—中期(分岐形成期)に分岐し、腺房部である肺胞が発生後期から生後(肺胞形成期)に形成され成熟型臓器となる。気道の形態形成は規則的なパターンに従って分岐することが知られており、他の管腔臓器に通じる形態形成の原理を追求するモデルとして、これまで多くの生物学者や数理学者の探究心を刺激し、様々なことが明らかになってきた。しかしながら、発生後期になり気道遠位端に肺胞が誘導されるメカニズムは未解決な問題であり、近年注目されつつある。そこで、私共は分岐形成から肺胞形成過程に至る過程に注目し、解析を試みた。
まず、分岐形成期と肺胞形成期の遠位端上皮細胞の形状を比較した。分岐形成期の上皮細胞は頂端収縮の発達を伴って円錐型であったのに対し、肺胞形成期では頂端収縮の低下と同時に細胞の形状が立方型(二型肺胞上皮細胞)あるいは扁平(一型肺胞上皮細胞)へ変化することを見出した。次に、この変化に相関するシグナル因子を探索したところ、肺胞形成期では分岐形成期に比べてWntシグナル構成因子の発現が低く、肺胞形成期におけるWntシグナル強制活性化は肺胞形成を阻害することを見出した。すなわち、Wntシグナルの活性の抑制が肺胞形成へのトリガーとなることが考えられた。
さらに、上皮細胞の頂端収縮の変化と肺胞形成との因果関係を明確にするため、数理モデルにて解析した。上皮組織を一層の細胞塊(シスト)とみなし、個々の細胞を頂端収縮させるとシストが自律的に分岐した。その上で、肺胞形成期で見られるように頂端収縮を解除すると、肺胞様構造が誘導された(今村寿子博士(九州大学)との共同研究)。
すなわち、(1)分岐形成期ではWntシグナルによって上皮細胞が頂端収縮すると分岐が誘導されること、(2)肺胞形成期ではWntシグナル低下に伴って頂端収縮活性が低下し、細胞が立方形あるいは扁平化することによって肺胞が形成されると考えられた。

本セミナーでは、肺胞形成におけるWntシグナルとその下流因子による細胞形態調節の役割を中心に議論したい。

【セミナーに関する問い合わせ先:今村寿子(hisaima@lab.med.kyushu-u.ac.jp, ex. 4857)】

170208麓先生セミナフライヤー

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