第27回応用幹細胞医科学部門セミナー開催のお知らせ 【延期となりました】

*本セミナーは延期となりました。日程が決まりましたらお知らせします。

【第27回応用幹細胞医科学部門セミナー/第813回生体防御医学研究所セミナー】

新学術領域研究「配偶子インテグリティ」共催

日時: 2022年2月9日(水)17:00-18:00

場所: 九州大学馬出キャンパス総合研究棟105セミナー室(オンラインへの変更あり)

演者: 三井優輔先生(基礎生物学研究所・分子発生学研究部門・助教)
演題: 分泌性蛋白質の可視化によって見えてきた、Wntと平面細胞極性の相互的制御関係
要旨

多細胞生物が形づくられるとき、細胞の位置や方向性は極めて重要である。脊椎動物の初期発生では分泌性シグナル蛋白質のWntがいわゆる「モルフォゲン」として、すなわち濃度勾配によって位置や方向性を与えると考えられてきた。しかし脊椎動物初期胚でのWntをはじめとするモルフォゲンの分布は大部分不明である。我々はアフリカツメガエル(Xenopus laevis)初期胚で位置情報に関わることが知られるWnt8が濃度勾配的な分布を示すこと、その制御に細胞表面の糖鎖を含む微小構造が関わることを見出した(Mii et al., Nat. Commun. 2017)。更にWnt蛋白質の動的な挙動を定量的に解析した結果、少数の自由拡散する分子が存在するものの、大部分は足場分子依存的に細胞表面に結合していることが示唆された(Mii et al, eLife 2021)。

平面細胞極性(PCP)は多くの動物に共通してみられる細胞の方向性であり、身近なところでは我々の体毛の流れもその一例である。極性化した細胞において、コアPCP因子と呼ばれる一連の蛋白質は細胞内の片側に偏るという際立った特徴を示し、細胞が方向性を感知あるいは保持する際に必須であることが知られる。Xenopus初期胚では形態形成に関わると考えられるWnt11の異所発現によって、PCPが方向付けられるので、やはりWnt11も濃度勾配により作用する可能性が考えられている。しかし我々が内在性のWnt11を可視化したところ、PCPが明確になる中期神経胚の神経板ではグローバルな濃度勾配というよりもむしろ組織内全体に一様に分布していた。興味深いことにその分布を高倍率で詳細に見るとコアPCP因子に類似して、左右方向の細胞辺上に局在がみられた。更にコアPCP因子の発現阻害によって、内在性Wnt11の分布が阻害されるとともに、過剰発現系においてもWnt11がコアPCP因子依存的に局在化することを見いだした。これらより、Wnt11は従来考えられてきたようにグローバルな濃度勾配によって一方的にPCPを方向付けるのではなく、コアPCP因子はWnt11の局所的な足場を構成することで相互的な制御が存在し、これにより自己組織化的に平面細胞極性のパターンが形成されるという新たなモデルが考えられる。

以上のXenopus胚での解析に加え、培養系で平面細胞極性を作る最近の試みについてもご紹介したい。

 

参加ご希望の方は下記までメールにてご連絡ください。

林克彦  hayashi.katsuhiko.104@m.kyushu-u.ac.jp