教授挨拶

平成19年4月1日に九州大学大学院医学研究院基礎医学部門病態制御学講座実験動物学分野 教授を拝命し、現在まで、九州大学大学院医学研究院での教育・研究に従事してきました。

研究を中心とした私の紹介を申し上げます。
私は、北海道大学獣医学部を卒業し、同大学大学院獣医学研究科の家畜衛生学講座(現微生物学教室)で研究者としてのスタートを切りました。博士後期課程の途中で同講座助手に採用され、梁川 良教授のご指導の下、主にレプトスピラの糖鎖抗原構造の研究に従事致しました。

その後、米国シカゴ市にありますRush-Presbyterian-St. Luke’s Medical Centerに留学の機会を得まして、Prof. Kailash C. Guptaの下、センダイウイルスP/C遺伝子の翻訳調節に関する研究を行いました。帰国後は、清水悠紀臣教授の下、主にオーエスキー病ウイルス(ヘルペスウイルス)遺伝子の転写制御に関する研究とオーエスキー病抵抗性動物の開発研究を開始致しました。

平成7年に北海道大学免疫科学研究所附属免疫動物実験施設(後に遺伝子病制御研究所附属疾患モデル動物実験施設)助教授として、これまで培養細胞を用いて行ってきた研究を発生工学により作製したトランスジェニックマウスを用いて遂行するようになり、ウイルスの転写調節因子の発現によって誘導される神経病原性に関する研究やオーエスキー病抵抗性マウスの開発とそのブタへの応用等に従事してきました。

平成17年からは鳥取大学の鳥由来人獣共通感染症疫学研究センター教授として、鳥インフルエンザに関する国内やベトナムでの家禽および野生鳥類の疫学調査、抗病性鶏の開発等に従事してきました。

九州大学医学研究院では、インフルエンザ抵抗性動物の開発や精神神経疾患発症病態モデルの開発に従事し、現在は、ワクチンプログラムでは制御することが極めて困難である豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の感染抵抗性ブタの開発研究、ゲノム編集によるインフルエンザ抵抗性ニワトリの開発及び疾患モデルマイクロミニピッグの開発並びにキヌレニン経路関連遺伝子改変マウスの比較解析とその新規神経疾患治療法の開発研究を実施しています。

実験動物学分野は、医学研究院附属ヒト疾患モデル研究センター 動物実験施設の2階に研究室があります。当分野では、以下のような研究を行っています。

  • 抗病性動物および精神神経疾患モデル動物の開発とそれら実験動物を用いた病理発生機序の解明、および生殖細胞の発生・分化過程におけるエピジェネティック制御機構の解析
  • ウイルス感染症に対する新規治療法の開発を目的とする、ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスに感染しない抗病性動物の開発、ウイルス性神経疾患の発症病態モデル動物を用いた難治性神経疾患の病理発生機序の解明やキヌレニン経路関連遺伝子改変マウスの比較解析とその新規神経疾患治療法開発への応用を目的とした研究
  • ゲノム編集法を用いた新規疾患モデル動物作製法の開発、モデル動物を用いて生殖細胞および幹細胞の発生分化に関わるエピジェネティック制御機構の解明を目的とした研究