第36回生命医科学セミナー (Biomedical Science Seminar
演 題:低線量率放射線による生物影響の解明に向けて
−DNA修復から細胞競合まで−
演 者: 冨田 雅典 博士
電力中央研究所・原子力技術研究所
放射線安全研究センター
日 時:平成29年2月9日(木)
17:30~18:30
場 所:病院地区総合研究棟2階 201セミナー室
同じ線量の放射線をより時間をかけて照射した場合、生物影響が低減される線量率効果が知られている。中国、インドの高自然放射線地域住民の疫学調査結果においても、高線量率短期被ばくの場合とは異なり、健康影響が増大しないことも報告されている。この現象を裏づける分子機構を明らかにすることは、放射線のリスクを正しく理解するためにも重要である。我々はまず、様々なDNA2重鎖切断修復遺伝子を欠損した培養細胞を用いた研究から、低線量率放射線照射下では、非相同末端結合の役割がより重要になることを明らかにした。また、マウス腸管の組織幹細胞(Lgr5+幹細胞)に着目し、Lgr5+幹細胞とその子孫細胞において放射線影響の蓄積性や放射線応答後の時空間動態を、lineage tracingにより評価した。その結果、線量率によって幹細胞ターンオーバーに生じる影響が異なることなどを明らかにした。近年、Lgr5+幹細胞を分取して3次元培養し、オルガノイドを形成する手法を用いて、放射線照射細胞と非照射細胞間での細胞競合の有無を評価する研究も進めている。これらの当所の一連の研究を紹介するとともに、低線量率放射線の生物影響の特徴について議論したい。
この度、共同研究の打ち合わせで来福されます。多くの方の参加を歓迎致します。
共 催:福岡医学会
問合せ:九州大学大学院 医学研究院 基礎放射線医学分野 續 輝久(内線6141)
※開催報告記事はこちらからご覧ください。